【世界遺産対決・群馬vs栃木】なかなか伝わらない製糸場のスケール感
去年11月の記事シークエンスで「世界遺産」の観光価値について
けっこう書いたのだけど、まあその続きと思っていただいてよいかと。
実際に行って感じることが大切ですもん。
集める旅、つながる旅の一環として、
ちょうど「ついで」があったので群馬県富岡まで足を伸ばしてみた、というわけです。
ついでがないとなかなか行けない世界遺産・富岡製糸場。
世界遺産より優先した「きっかけ」についてはまた別の機会に。
世界遺産への登録は2014年なので、ようやく6年が経過。
いっぽう今回の対決相手の「栃木」はいわずとしれた日光。
登録名は「日光の社寺」で1999年の(世界遺産)登録。
そこのアナタ、そんなん知名度から言って勝負は見えてると思ってませんか?
まあね。
でも単なる勝ち負けでもないのですよ。
訪れる前は旅サイトのクチコミ評価を見て、富岡製糸場、
日本の「世界遺産」のなかで不人気ナンバーワンはここか?
とまで覚悟しておりました。
でも、そうでもないんだな。
当然実際に訪れて過小評価になるポイントがいくつか見えてきたんで、
日光との「対決」も成立するか、と思いました。
富岡製糸場の最寄り駅は「上州富岡」駅。
高崎から上信電鉄に乗って片道40分ほど。
上信電鉄。かなりシブイぞ。片道40分だしな…
うーんこの距離感か、第一の弱点は。
こればかりはしかたがない。
上州富岡駅から製糸場までは徒歩で10分ほど。
近くはないけど、嘆くほど遠いわけではない。
まずは建造物として「国宝」指定を受けているのが
この三棟。
順に「東置繭所」「西置繭所」「繰糸所」。
いずれも明治5年にできた建物で、明治の建物もちゃんと保存されていれば
国宝の価値がある、ということでした。
中央のプレートに「明治五年」と書いてある。
東置繭所、2階公開部分
繰糸所入口と展示された機械
とにかく肝はこれだけの大規模な建物をよくいままで残してきたな、ということにつきます。
第二の弱点は明治期の富国強兵政策、殖産興業の一環としての製糸場なんだけど、
官営だった時期は意外と短くて、20年経たないうちに民間(三井)に売却されているのだ。
以後、いくつかの経営者の変遷を経て、1987年に操業に幕を閉じた。115年の歴史。
つまりこの製糸場の価値は官営工場として民間に先駆けて、モデル工場として
全国へ製糸産業を普及させた、ということにもあるんだよね。
当然、蚕に桑の葉を食べさせて、繭を作らせ、そこから糸にする行程がなかなか長い道のりであることは
場内展示で説明されているのだけど、
問題は官営から民間に経営が移り、明治日本の外貨獲得に貢献していた生糸が徐々に
競争力を失って行った歴史があまり説明されていない。
繊維産業の中の生糸、絹織物のポジションが展示の中に見つけられないのね。
(生糸が)他国との価格競争に敗れた結果と、それに代わる安価で多様な繊維が普及したことは
昭和生まれには基礎知識として埋め込まれているけど、若い世代にそれが伝わってるのか?
そこが大きな弱点と見た。
農家の副業としての「養蚕」の存在も、経済構造の変化とともに大所高所から俯瞰しないと
いろいろ見えてこない。つまり産業構造の中の製糸業を理解するのって、けっこう難解だっちゅう
わけです。
※そういえば(世界遺産)白川郷の合掌造りの2階でも養蚕が盛んだったよな…
世界遺産に登録されて、少しずつ予算をかけて「公開エリア」を増やしている富岡製糸場。
国宝の西置繭所は2020年にようやく公開にこぎつけたらしいのだけど、
製糸場のそもそもの入場料は
なのに、さらに特別展を呼んできて、もう600円稼ごうという裏事情が
切ないカンジがしましたね。
(レゴで表現する世界遺産たち展)
ブログ主が嫌いなのが「せっかく来たんだからスミズミまで見ていけ、けちるな」
というスタンスで、何割かは「一度に済ましておけばよかった。そのためにまた行く???」と
なるのだけど、その「また行くか(どうか)」こそがその観光名所の価値だと思うのね。
もっといろいろ学べるけど、見る側はそこまで深いものを予期してないので、
そこももったいない。
で、高崎からの上信電鉄往復きっぷ(入場料込)で割引してもらったんだけど、
(2820円のところ、2200円で620円オフ)
ここまで見通せたら、行った価値はとりあえずあったかな?
ということでした。
つまり
そんな噂ほどしょぼい世界遺産じゃないです。
これに対して思ったより残念だったのが日光。
観光地としての知名度って「がっかり」こそあれ、プラスαにはなかなか
ならないことを改めて知りました。函館も足元を見つめないといかんで。
うぅ、みんな仲良くですよ(笑)
日光の社寺、がっかり話はこの貼り出しから始まります。
あと群馬の補足。年末O.A.のNHK「鶴瓶の家族に乾杯」
風間俊介ゲストで群馬県桐生市が出てきて
とても感じるものがありました。
たぶん群馬県内だけで共通認識があるんだろうね。
関東圏での共通認識にまったく至ってないのでは
全国区にならないのもわかる。
旅行クチコミサイト「4T」の扱いを見ても惨憺たるものだった。
上毛電鉄に乗りに行く機会があるはずだから、桐生に1~2時間立ち寄って
東武線に乗って帰ってきたい。いつになるかわからんけど。
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